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interview連続起業家
けんすう氏

連続起業家のけんすうさんに、長年愛用されている Realforce キーボードや現在運営されているマンガサービス『アル』のことなどを伺った。

マンガを愛するワケ

けんすうさんは連続起業家とも呼ばれるくらい様々なサービスの立ち上げに関わり、国内インターネットの歴史を語る上では避けて通れない『したらば掲示板』運営会社の社長なども歴任されていました。現在はマンガに関するコミュニティサービスを提供する『アル』を運営されていますが、それほどマンガがお好きなのですか?

けんすう氏

趣味もマンガしかない、といってもいいくらい好きですね。

なぜ、今、けんすうさんはマンガサービスにフォーカスされているのですか?

けんすう氏

たとえば、週刊少年ジャンプとかでも『ONE PIECE』を除くと、ここ1、2年でスタートしたマンガが多数を占めます。それも、昔から連載していた作家さんではなく、新人マンガ家さんが多い。大ヒットマンガの売り上げや集客力が、若い作家さんと編集者にチャンスを与えて、また新しいクリエイティブが生まれるという仕組みがいい感じに回っている業界です。グローバルに他と比べてもトップクラスのエンタメを、自分達の言語で最新のものが読めるのが日本人にとってはすごく良いなと思っているので、この仕組みをより強固にするようなサービスをやりたいと考えているからです。

プロセスを応援するという日本的発想

マンガサービスの『アル』はどういったことを目指しているのですか?

けんすう氏

今の『アル』のミッションは、「世界中の人がマンガを楽しめるようにする」というのを目指して動いています。世界というと、海外展開を想像しがちですが、今の時代にあった新しいマンガの楽しみ方を提案する、というのもチャレンジしています。例えば、一人一人が個人的に楽しむのではなくて、ライブみたいに同じマンガを一斉に同時に読むとかはないかな、など考えて新規サービスをテストしてみたりしています。また、今はマンガといえば、マンガ作品そのものを読むのが今は普通ですが、たとえばマンガ家さんが作業している姿をライブ配信できて、ファンがそれを観て楽しめるサービスを作ったりもしていますね。

現在立ち上げ中の『00:00 Studio』(フォーゼロスタジオ)ですね?

けんすう氏

そうですそうです。まだ正式リリースではありませんが、誰でも見られる形にしています。

クリエイターとあなたを00:00からつなぐサービス Fourzero Studio 

こちらはどういう観点から発想されたのでしょうか?

けんすう氏

アウトプットされたクリエイティブの質ってどんどん上がり続けていて差がなくなってきていると思います。たとえば、飲食店も最近は美味しいお店ばかりじゃないですか? レビューサイトが充実しているということもありますし、レシピや経営方法といったノウハウも多く流通しているので、みんな失敗しなくなっているんです。20年前とかだと、美味しくないお店も結構あったので無難なチェーン店に行っていました。しかし、情報テクノロジーが一般化した結果、アウトプットのクオリティの良し悪しは、もはや一部の超トップ層以外ではそんなに差がでなくなっています。なので、お客さんもそこには興味が無くなっていると思っています。
じゃあ、何に興味があるかというと、「プロセス」です。プロセス・エコノミーという言い方を最近しているんですが、たとえばチャレンジしている姿とか、この人を応援したいみたいなところにお金が集まるようになっているのかなと。わかりやすい例では、日本のアイドルとかも近くて、歌や踊りが超一流だから好き、というより、がんばっている姿を観て応援したいから課金する、みたいなことが起きています。韓国とかではグローバルで、トップクオリティで勝負をするという形が好きなのかな?と思っていますが、日本では、どちらかというと人を応援することに価値を感じるという人が多いんです。今後はグローバルでも、この日本的な価値観が広がるんじゃないかと思っているので、アウトプットを評価して課金するだけではなく、「こんな感じで考えています」とか、「こういうマンガのシナリオでやろうと思って作ってみたけどダメだった」みたいな、挑戦や失敗も含めた過程に価値を感じてもらえるようなものを作りたくてやっています。

とてもステキな発想ですね。価値観というと、『アル』で投稿できるマンガのレビューは「このマンガの好きなところを自由に書いてみてください!」とされていますよね。

けんすう氏

基本的に、ネガティブな意見の方がみんな書きやすいんです。その割にはさほど参考にならない。マンガは特に敷居も高いものではなく、1話とか1巻が無料で読めてしまうのでネガティブな意見は「そうなんですね」で終わってしまいます。プラスにならないので、やっていませんね。

キーボードへのこだわり

けんすうさんは Realforce をいつ頃からお使いに?

けんすう氏

ちょっと自信はありませんが、社会人1年目とかな気がします。2006年とかなのかな?

ご存じになられたきっかけは覚えてらっしゃいますか?

けんすう氏

・・・もう覚えてないですね(笑)

では選ばれたきっかけは?

けんすう氏

・・・全然覚えてないです。

ナルホド(笑) 今に至るまで使い続けられている理由ではいかがですか?

けんすう氏

キーボードも仕事道具もめちゃくちゃ色々試すタイプなんですよ。だから有名なものからマニアックなものまでそれなりの数は試していて、その中で生き残っていたというのがたぶん理由ですね。他のことについてはそんなに気にならないんですけど、毎日触るものには結構厳しくてちょっとでも気に食わないと嫌になってしまうタイプなので、こだわりはそこそこあります。微妙なサイズ感とか、押したときの感覚とか、色とか角度とか、そういったものの納得度が一番高くてクオリティが高い、というのが大きいですね。

となるとキーボード以外でもこだわりのものがあるのですか?

けんすう氏

例えば財布とか、手帳のカバーとか、時計とかそういったもの全般ですね。バッグとか、靴とか。「これでもう探さなくていい」となるのはなかなか少ないですね。

パソコンも毎日触るもののひとつかと存じますが、現在は何をお使いですか?

けんすう氏

今は MacBook Pro ですね。2006年くらいからは Mac を使うことの方が多いです。やっぱり動きの快適さとか、その辺が Mac の方がスムーズだなと感じています。

Realforce も当時から Mac で使われていたのですね。

けんすう氏

そうですね。だから、Mac 版に買い換えるまではキーバインドをソフトで変更していました。今使っているのは R2TLSA-JP3M-WH ですね。
持ち歩くまではしていませんが、Realforce が全部で3台あって、会社とか家の各部屋とか行く場所ごとに置いています。


けんすう氏使用モデル:R2TLSA-JP3M-WH 

けんすう氏のデスクまわり

Mac 版の Realforce は初の試みでしたが、Mac ユーザーとして気になる部分はありますか?

けんすう氏

「Mac に適したものが欲しいな」が解決しちゃったので、あんまり無いですね。ちょっとでも接続が切れると嫌で有線の方が好みなので、個人的にはそこも良いなって感じです。

Mac 版の中から APC 機能付き+静音モデルを選ばれた理由は何ですか?

けんすう氏

一番良いのにしようと思った記憶があります。触り心地はどうしても実際に使ってみないとわからないので、良いのから買ってみたんだと思います。

キー荷重も 30g で最軽量ですが、実際に使用されてどうでしたか?

けんすう氏

全然疲れないので、めちゃくちゃ良いなと思っています。会社もリモートでほとんどチャットなので相当な量を相当なスピードで打っているんですけど、耐久性も高くて全くヘタれなくて疲れないのでずっと使っている感じです。

とんでもない量のアウトプットが生まれる理由

普段はどれくらいの速さでタイピングされるのですか?

けんすう氏

パッとは言えないんですけど、1時間に 8,000 から 10,000 文字くらいは文章で書けます。ライティングを仕事にしている他の人からも、速いとは結構言われます。

タイピングに関しても十分な速さですが、アウトプットの量が驚異的です。何かコツはありますか?

けんすう氏

クセだと思うんですけど、頭の中で映像を思い起こせないんです。思考するときには、ブログみたいな文章スタイルで考えるんですよ。いろんなタイプの人がいて、独り言で考えるタイプとか架空の人と話す感じで考えるタイプとか映像で考える人とかいるらしいんですけど、僕は文章タイプ。なので、何か考えているとき、1つの文章をずっと考えて編集している感じで、整理がついたらキーボードを叩くだけなので速いんだと思います。

けんすうさんの発言は、そのまま文章にしても映えそうだなという印象があります。その辺りは思考法が影響しているんですね。

けんすう氏

そうですね。だから変な話、短いのだとツイッターに投稿したときにどれくらいの反応があって、どういうレスがつくかまで想像しながら考えています。この言い方をすると、これくらいのアテンションはあるよねとか、こういう言い方をするとこういう反応が返ってくるよね、っていうのまで。20年くらいインターネットやっているとそうなります。

炎上したツイートを中身そのままに表現だけ変えれば受け入れられるのではないか、みたいな実験もされていましたよね。

けんすう氏

そういう実験をよくやっていたりしますね。人間って言われた単語に反射で反応して、それを自分の感情だと思ってしまうので。めちゃくちゃイイこと言ってそうな感じだけど何も言っていない文章とかでも感動したりするんですよ。人間って面白いなーって思って、そういうのは試したくなります。

さまざまな形でアウトプットされていますが、けんすうさんなりのコツみたいなものはあるのですか?

けんすう氏

結構シンプルで、タスクって大きくなればなるほどやりたくない率が上がるらしいんです。当たり前なんですけど、細かければ細かいほどできるようになります。ちゃんと細かくするのが大事で、1日の目標を1文字とかワンフレーズくらいにしておくと、やらない方が難しいってレベルになるんですよ。1文字をサボる方が面倒くさい。そこから辞める方が人って面倒くさいので、気付いたら結構惰性で書いている状態になる。やり始めてからじゃないとやる気って出ないらしいので、タスクを小分けにして最初のハードルを下げて、作業興奮でだんだんやる気が出てきてアウトプットできるようになる。そういう人間の本能的なものを使ってやっていたりします。

確かに、そこまでタスクが減るとサボる方が難しいですね。

実験と取り組みと人となり

受験に特化したポータルサイトの『ミルクカフェ』を立ち上げられた経緯を以前拝見したときには自分の受験のためと言われ、現在はマンガ業界のため、マンガを愛する人のためにとサービスの対象が広く転じてきた感があります。何かきっかけなどはあったのですか?

けんすう氏

たぶんそんなに違いはなくて、自分が欲しいなと思うサービスをやりたいという気持ちが 1/3 くらいで、こうやったらみんなこう動くんじゃないかみたいなものを実験的に確かめたいという気持ちが 1/3 くらいあって、残りの 1/3 がお客さん目線で観た時に何があったら便利かみたいなのがそれぞれあって、その割合はあまり変わっていない気がします。

確かにけんすうさんの取り組みには実験的なところが多いですね。『アル』ではマンガ業界を盛り上げるためにはどうすればいいかを実験したかったのですか?

けんすう氏

会社としては、『アル』自体は箱なので、そこでいろいろなサービスを試しまくっているというのが正確なところですね。
今、新規サービスで、マンガをみんなで一斉に読みつつ、作者さんが音声で「実はここのコマにはこういう意味がある」みたいな解説をしたらどうかも試したりもしたりしているんですが、今までにない体験なのでめっちゃおもしろかったんです。そういう、見たことがないサービスを作ってみるとどうなるか見てみたいという、そんな感じです。

アル株式会社の代表取締役として、けんすうさんが現在行っている業務はどういったものになるのですか?

けんすう氏

『アル』も色々なサービスをやっているので方針を決めたりとか、出版社さんとの関係作りとか、外へ向けての発信とかその辺をガッツリやったりしています。特に、『アル開発室』というクローズドの有料コミュニティで、どういうことを考えて何を作っているのかという投稿を頻繁にやっています。

けんすう著「物語思考」 

投稿というと Twitter も拝見していますが、現在は本を執筆されているとか。

けんすう氏

面倒くさいなと思ってずっとやっていなかったんですけど、ようやくちゃんと書こうかなと。『物語思考』というタイトル  です。
『アル開発室』でも質問を受け付けていて何千件も答えているんですが、若い人からは「やりたいことが見つからない」とか、「モチベーションが・・・」、「キャリアをどうしよう」みたいなことがやっぱり大多数です。そこは「人生を物語と同じように設計すると良いですよ」という話になっています。例えば『キャラクターが求めるもの』・『キャラクターの動き』・『選択』・『障害』が物語の方程式らしいんですね。「『キャラクターの求めるもの』つまり自分がどうしたいか、はこういう感じで探すと見つかりやすいですよ」とか、「『キャラクターの動き』っていうのが行動指針で、こういう理論があって、決めておくと動きやすいですよ」ということを細かく説明しています。

マンガやアニメで育ってきた自分くらいの世代だとすごく受け入れやすい気がします。少し話は変わるかもしれませんが、けんすうさんは立場や視座の高さと比べると、やわらかい態度をお持ちだなと感じました。何か意識されていることはあるのですか?

けんすう氏

シンプルに考えて、自分が77億人のなかで一番頭がよいかというとそうではないと思っています。例えば今、若い人に会ったら10年後にその人の方が偉くなっている確率はそこそこあるじゃないですか。年下だろうと、社内のアルバイトだろうと敬語を使っています。下でいたほうがいいなと思っています。

社内でもですか。

けんすう氏

そうですね。社内の10代の大学生にも、僕はめちゃくちゃ敬語で話します。その人がマーク・ザッカーバーグみたいになったら、何かお願いする可能性ってあるじゃないですか。なので、そっちの方が良いなと思っています。

逆に若い人からやりにくいって言われたりすることはないのですか?

けんすう氏

先輩風を吹かせたほうがコストが低いケースはあると思いますが、それはやってないって感じです。コンテンツって中身と表現のかけ算なので、表現によってやりづらさを感じるのはたぶん中身に問題があるんです。表現部分が問題になることって、ネガティブな場合はあるんですが、丁寧側に倒しておけば、そこまで問題にならない、と思っています。表現がマッチしていればかけ算で数字は大きくなります。やりづらいと言われたことはないですね。

いいキーボードで人生が上手くいく率が高くなる?

けんすうさんの以前の発言で印象に残っているフレーズがあり、マーケティングでは「ドリルを求める顧客が欲しているのは穴だから、穴を与えよ」と言うところに、けんすうさんは「ドリルを与えたくなる」とおっしゃっていましたよね。

けんすう氏

そうですね。絶対、ドリルが欲しいからドリルを買っているので、顧客が欲しいのは穴だというのは限定的な見方だと思っています。

楽しいプロセスがあるから目的が生まれるというのはとても面白い考え方だと感じました。確かに自分もカッコイイドリルが欲しいな、と感じます。そのあたり、Realforce ではいかがですか?

けんすう氏

やっぱり、キーボードが良いとアウトプットしたくなるんですよ。タブレットとかスマホって、どちらかと言うと消費に向いているプロダクトなので、アウトプットが減りがちなんですよね。キーボードを良いものにするとアウトプットが増えて、アウトプットが増えるとインプットの効率性は上がるので、自分が成長して人生が上手くいく率が高いなと思っています。その意味でもキーボードはちゃんとしたものを買った方がいいっていうのは、普段から結構言うことですね。

普段から Realforce をオススメいただいているのですか?

けんすう氏

社員にあげたりとかも割としています。毎日触るんだったら付属品やノートパソコンのものよりは、ちゃんとしたものを使った方が絶対いいと思っています。言い方はあれですけれど、プロの野球選手が「バットはなんでもいいですよ」って言っていたら信用できないじゃないですか。
今もコロナ渦になってから、ミーティングもビデオ会議やチャットに移り変わっているのでより重要になっています。腱鞘炎になったり、肩こりになったりだとか、入力スピードが遅くなるだけでも影響が大きいので、たった数万円の投資で解決するなら絶対買った方がいい。結構、過激派ですね(笑)

過激派、増えてほしいですね(笑) ありがとうございました。